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メタボロームってなに??
メタボロームとは、代謝物(メタボライト:metabolite)の一斉測定を行い、試料中に含まれる代謝物の全体の測定を行い得られた情報の総体を意味する言葉です。
メタボロームの測定方法
よく似た言葉に“メタボロミクス”がありますが、こちらは代謝物全体を測定する測定方法を意味します。つまりメタボロミクスで測定を行い、結果を解析し得られた結果がメタボロームと言うことになります。
意外と身近なメタボローム
おそらくこれを読んで下さっている方々は“メタボローム”という言葉すらお聞きになった事は少ないと思いますが、意外と皆様の身近で近いことが行われています。それは、健康診断等で行われる血液検査や尿検査です。検査項目として、血糖値(ブドウ糖)や尿酸値やコレステロールは、代謝物に分類される物質です。これらの数値を測定する事で病気の診断や予防に役立っています。
メタボロームの測定で分かること
製薬会社様や食品会社様では、薬や健康食品に含まれる有効成分の効果の確認にメタボロミクスが利用される場合があります。
一例ですが、体重が減少する有効成分があった場合、幾つかの作用機序が考えられます。
①食欲が減少する、
②食事の吸収が悪くなる
③体内の脂肪の分解が促進される。
この3つの原因が考えられます。
3つ原因を特定するのにメタボロームが使われます。
①食欲が減少する場合は、ホルモンの影響が考えられるのでホルモンの測定。
②吸収が悪くなるのであれば、消化管内の消化物を測定する事で消化が阻害されたのか、吸収が阻害されているのかが分かります。
③体内の脂肪が分解されるのであれば、血中の脂肪酸量の増加などが観察されます。
メタボロームはオミックス解析の一種
メタボロームとはオミックス解析の一種です。
オミックス(omics)とは、前述のように測定技術を指します。2000年前後に測定装置とコンピュータの発達によって一斉測定が、まずセントラルドグマ(DNA・RNA・タンパク質)を対象として可能になり、次いで代謝物も質量分析計の発達によって全体測定が可能になり、メタボロームが可能になりました。
オミックスの開発
オミックスが開発されるまでは、1成分ずつ測定を行っていました。その為、100成分を仮に測定するには、かなりの手間が掛かりました。この様に1成分ずつ測定しなければならない場合、ヒトの代謝物が約5,000種と言われていますので、全てを測定するには5000回測定が必要になります。さらに、複数のヒトの代謝物を比較するには、5,000回×人数となり、この回数測定を行うのは、手間が掛かりすぎてしまいます。その為、セントラルドグマのオミックスの開発と同時に代謝物のオミックスも開発が進められました。
メタボロミクスが開発されるまでの経緯
オミックスは、初めにDNAを解析対象としたゲノミクスの研究が急速に行われるようになりました。その結果、遺伝子の影響が強い部分(血液型、光彩の色、髪の色等)や逆に影響が半分程度の部分(体質と言われる部分)などこれまで出来なかった何万人単位のヒトのゲノムの比較が行われた結果、分かるようになりました。
DNAは、基本的に一生変わることはありませんが、RNA、タンパク質、代謝物は、環境やストレスや病気等で変化します。その変化を観察するため、トランスクリプトミクス(RNA)、プロテオミクス(タンパク質)、メタボロミクス(代謝物)が開発されました。
今回例に挙げた事は、利用方法のごく一部ですが、この様に代謝物(メタボローム)を測定する事で多くの有益な情報が日々獲得されています。
この解析の進化は、質量分析計とコンピュータの発達に支えられています。これからもそれぞれの発達が見込まれていますので、最終的には血液1滴で皆様の体の状態が分かる世界が来ると思っております。