バイオテクノロジーってなに?

バイオテクノロジーと聞くと遠い存在のように感じられる人もいるかもしれませんが、簡単に言いますと “生物の力(バイオ)と科学技術を組み合わせて生活を楽にする物(テクノロジー)を作り出す技術” と言う事です。

洗濯用洗剤はバイオテクノロジーの技術のひとつ

おそらく一番身近なバイオテクノロジーとは、洗濯用洗剤に入っている酵素です。
もし、生物から酵素を抽出・精製した場合、今のように気軽に使えるような価格にはなりません。これは、微生物に洗濯用酵素の遺伝子を組み込み、酵素を大量に生産させることで安価で安定的に酵素を獲得出来る技術が開発されたからです。さらに、酵素生産に使われる微生物も遺伝子改変技術を用いてより生産力を高めています。

この様に微生物に遺伝子を組み込む事や微生物の遺伝子を容易に改変する技術が確立したことで、バイオテクノロジーはより身近に、便利な生活を支える欠かせない技術になりました。

セントラルドグマを正しく理解する

バイオテクノロジーの基本として“セントラルドグマ”を正しく理解することが大事だと思います。セントラルドグマとは、DNA(遺伝子本体)→RNA→タンパク質の流れの事です。この流れが生命の性質を決定づけています。

DNAとは

DNAは、遺伝子の本体であり生物それぞれを性質や形態の情報が保存されています。その為、このDNAを改変する事でより能力を変化させる事が出来るのです。

RNAとは

RNAは、DNAを元にして作られます。DNAの遺伝情報は常に使われているわけではありません。

それぞれの状況(成長段階やストレスや食事や睡眠等)や色々な場面で必要な情報が変わってきます。その為、RNAを作成する際にどのDNA(遺伝情報)を元にするかは、厳密に制御されています。そして、作られたRNAを元にしてタンパク質が作られます。

我々の体は、おおよそ水分が約60%、タンパク質が約18%、脂肪約16%、ミネラル約6%です。水分を除くとタンパク質は第2の成分であり、我々自らが生産する成分です。

タンパク質の役割とは

タンパク質と言ってもその役割は多岐に渡ります。皮膚や筋肉や髪の毛といった構造を司る部分もタンパク質です。さらに、酵素や血液もタンパク質が多く含まれています。タンパク質は、セントラルドグマとしては、下流に位置し様々な制御を受けた結果作られ、構造と酵素による化学反応を司るため生物にとって重要な役割を持っています。

この様にセントラルドグマの精密な制御によって行われているのです。その為、セントラルドグマのより深い理解が生命そのものへの理解に繋がると考えます。

古典的な生物学

さらにセントラルドグマをまず理解する事に加えて、バイオテクノロジーという言葉が出来る前の2000年頃の生物学(遺伝子編集技術が登場する前)を理解することでより深く理解することが出来ます。

例えば、iPS細胞による再生医療の場合を例に紹介します。
再生医療が登場する前の古典的な生物学として、分化発生学(受精卵から赤ちゃんになり、成長する仕組み)は、もう研究がしつくされた分野だと思われ、研究分野として高い注目は浴びていませんでした。

iPS細胞を作る最大の問題は、どの遺伝子を改変すればiPS細胞を作り出せるのかでした。その後、iPS細胞を作るために必要な遺伝子が決まり、iPS細胞が入手可能になり、次の段階として再生医療への応用が、世界中で研究が開始されました。

研究を進める中、古典的な分化発生学の知見と、技術の進歩による新しい発見(テクノロジー)が融合したことで、様々な臓器をiPS細胞から作れるような段階になっています。


この様にバイオテクノロジーは、我々の生活をより豊かにするための技術であり、セントラルドグマとは生命現象そのものの中心にあるものです。

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