発酵と腐敗の違い
発酵と腐敗の違いは、メカニズム的にはありません。
では何が違うのでしょうか?
個人の主観
それは、ヒトにとって好ましい物が発酵、好ましくない物が腐敗となり、個人の主観で発酵と腐敗は分けられているのです。
私の場合には、匂いの強い物は苦手ですので、チーズも癖の少ない物を好みますので、ブルーチーズやウォッシュタイプは、食べられないので腐敗と感じますし、納豆や鮒ずしも苦手で腐った食べ物だと思っています。
この発酵と腐敗は同じメカニズムと言いましたが、これは微生物が成育の過程で栄養分を代謝する事(タンパク質や核酸を分解しアミノ酸(旨味成分)や呈味核酸を生産するため)で、美味しいと感じる食べ物が出来るのですが、同時に不快な臭いが発生する場合があり、我慢できない場合に腐敗と感じるようになります。
腐敗がなくなるとどうなる?
では、この世界から腐敗が無くなったらどうなるのでしょうか?
良いことは、木が腐らなくなるので、木造建築がいつまでも綺麗なまま残る事が可能になります。逆に木が腐らなくなるという事は、森林での落ち葉がいつまでも綺麗なまま残ってしまいますので、山の保水力が無くなり洪水が起こりやすくなり、また腐葉土が出来ず栄養が循環しなくなるので、森林の成育が不良になってしまいます。さらに、栄養が川に流れ込まないので、魚の生育も悪くなる可能性まで考えらえます。この様に今まであった物質循環の大きな部分を腐敗(微生物)が担っていますので、腐敗だけを無くすことは出来ないと思います。
熟成とは
また、発酵に近いイメージの言葉に“熟成”があると思います。熟成は主にタンパク質が分解されてアミノ酸になって旨味が増します。このメカニズムだけであれば発酵と全く同じです。
しかし、決定的に違う部分があります。それは、発酵は微生物の力を借りて行うのに対して、熟成は他の生物の力を借りるのではなく自分自身が持っている分解酵素を使ってタンパク質を分解していますので、低温で細菌が繁殖しない条件で行う必要があるのです。
この様に発酵と腐敗は、同一の現象であり生活にとって必要な事であることが分かると思います。