抗原と抗体とは何なのでしょうか?

一言で説明すると抗原とは体にとって異物です。そして、抗体とは、その異物を無毒化や排出するために我々の持っている免疫機構が作り出すタンパク質性の物質です。この作られた物質が異物に結合して無毒化します。

この免疫機構を持っていることで細菌やウィルスと共存することが出来るのです。もし、免疫機構を持たずに空気と接触すれば、空気中を漂っている細菌が皮膚や粘膜で繁殖してしまい、最悪生きて行くことは出来ません。

この様に免疫機構のおかげで、細菌の存在を強く意識せずに生活することが出来るのです。

抗体について

では、この抗体について説明しましょう。この作られた抗体は、認識する対象が厳密に決まっています。その為、病原体(病気)ごとにワクチンを打ってそれぞれの病原体に対応する抗体を準備する必要があります。病原体の種類によって変異のしやすさが決まっています。

その為、1度病気になれば(ワクチンを打てば)一生かからない病気(おたふく風邪、水疱瘡、はしか等)もあれば、季節性インフルエンザのように毎年変異するため毎年ワクチンを接種して新しい変異に対応する抗体を準備しておく必要な病気もあります。

インフルエンザワクチンの型(変異型)が外れる事がありますが、ウィルスの型による構造の違いは少ない場合が多いので、もし流行する型と接種したワクチンの型が異なっていても獲得された免疫によって、症状が軽く済む可能性が高いのです。

特にインフルエンザに掛かりやすい人や高齢者の方は、可能な限りワクチン接種をお薦めします。このウィルスの型の違いは、遺伝子の違いによって分類され、この遺伝子の違いから作られるタンパク質が違います。

作られたタンパク質の形が異なるので、型が異なるとウィルスの形が違うので、抗体の結合がし難くなったり、結合できなくなったりするのです。その為、免疫の防御効果に違いが生じるのです。

免疫機構が人にとって不利益を起こす場合がある?

逆に免疫機構が人にとって不利益を起こす場合があります。代表例が、花粉症です。花粉症は、多くの人が春と秋に植物の花粉が原因で、風邪に似た症状が引き起こされます。

これは、本来であれば無害である花粉を免疫機構が有害だと判断し、花粉を排出しようと過剰に反応し咳、くしゃみ、鼻水と言った排出機構が作動してしまいます。この反応にも抗原抗体が関連します。

花粉症の人は全ての花粉に対して反応するわけではありません。個人ごとに反応する花粉が決まっています。侵入した花粉を抗原(有害な異物)であると認識することで症状が引き起こされます。

つまり高い特異性によって杉の花粉症であっても本州と北海道では杉の種類が違うので、本州の人が北海道に行くと花粉症が出なくて助かるという例があります。この様に無くてはならない免疫がヒトにとって有害な事象を引き起こす事があるのです。

新型コロナウィルス検査の診断キットについて

身近な話として新型コロナウィルス検査の診断キットがあります。診断キットには、抗原診断キットと抗体診断キットがあります。

ドラックストアで販売されているのは、抗原診断キットです。抗原診断キットが反応するのは、抗原ですので異物であるコロナウィルスに反応します。その為、抗原診断キットで反応があれば体内にコロナウィルスを持っている(感染している)事になります。

抗体診断キットを使って反応したのであれば、コロナウィルスに対しての抗体を持っていることになるので、ワクチンを打ったことにより抗体が出来ている。もしくは、過去に新型コロナウィルスに感染していた事が分かります。

PCR検査について

これら診断キットは安価で操作が単純で短時間で結果が分かります。しかし、新型コロナウィルスが流行した当初はPCR検査しか出来ませんでした。

その理由は、PCR検査は核酸(DNA、RNA)をウィルスから抽出し、ウィルスのそれぞれの種類や型に特徴的な配列を指標にして検査を行いますので、配列情報さえあれば極短時間で検査が出来るようになります。その為、流行初期ではPCR検査しか検査方法が無かったのです。

さらに、変異株はそれまでのPCR検査の設定では変異株用の設定になっていないので検出することが出来ないのです。その結果、症状は絶対に新型コロナウィルスに感染しているはずなのに、PCR検査では陰性になってしまう場合がありました。

ゲノム検査について

そうなってしまうとPCR検査ではなく、より多くの情報量が獲得できるゲノム検査を行い、ウィルスの遺伝子全ての配列確認が行うことになるでしょう。

このゲノム検査は、PCR検査よりも時間も費用も掛かってしまうので、新型コロナウィルスの検査で採用されているのは、おそらく限られた機関になるでしょう。

以上のように異物である抗原を排出・無毒化する抗体をもつ事で、我々は健康な生活が送れるのです。これからインフルエンザの季節になりますので、かかりやすい方は早目の接種をご検討ください。

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