定性・同定・定量ってなに?
成分分析の方法の違いによって、定性・同定・定量という言葉の使い分けがあります。
なぜ定性・同定・定量と区別して使われているのか?それは、目に見えない成分を調べなければならないからです。
定性とは
定性)“性質を定める”と言うことであり、ある特定の条件によって分けられ検出される事であり、1つの物質もしくは、複数の物質が同時に混ざった結果になっている可能性が高い状態です。
同定とは
同定)“同じと定める”と言うことであり、1つの物質であると決定することです。
定量とは
定量)“量を定める”と言うことであり、試料中に決まった成分の量を決める事です。
この同定と定量を行うためには、測定したい成分が必要になります。その測定したい成分の測定結果と同定(定量)の測定結果と比較して全く同じ様子の結果になることを確認する必要があります。
もし、様子が異なるようあれば、測定(試験)を阻害するような成分の影響を受けていることになり、その測定(試験)は間違っているという事になります。
刑事ドラマに例えてみましょう
以上のような表現ですと分かり難いと思います。そこで、私の好きな刑事ドラマに例えてみましょう。
定性は“容疑者”、同定は“犯人”、定量は“犯行回数”が妥当だと思います。
つまり、容疑者と言うことはアリバイが無くて、動機を持っている人であり、犯行を行う可能性の高い人たちとなります。この様に“定性”とはある条件によって選ばれている状態ですが、証拠が足りなくて1人に選び切れていない状態です。
次に犯人と特定するには、複数の証拠を積み重ねて容疑者の中から1人に特定した状態です。この様に同定とは、複数の条件を重ね合わせて1つの成分に決定する事です。
最後に定量は犯行回数ですので、犯人が何回犯行を行ったのか調べる事です。この様に同定によって決定された成分の量を決める事です。
定性分析しか出来ない成分も多くある
以上の様に書くと定性とは中途半端な状態のように感じられ、全ての試験で同定や定量を行った方が良いとなりますが、同定・定量には複数の試験を組み合わせて行いますので、定性試験より時間も手間も必要になります。
さらに、全ての成分は市販されていません。成分によっては安定性が低く直ぐに分解されている物質も多く有ります。その為、定量が出来ない成分も多く存在します。と言うことは定性分析しか出来ない成分も多くあることになります。
より具体的にまとめてみると…
目で確認出来る大きさの物であればすぐに定量は可能です。もし水の入っているコップにビー玉が入っていたら、簡単にビー玉の数を数えることは出来ますが、その水の中に含まれるミネラル成分や塩素濃度が知りたい場合には、目で見ても含まれている成分は分かりません。
その為、水に含まれる成分を一斉成分分析(定性)で候補成分を絞りこみ、それぞれの成分を決めるための試験(同定)を行い、決まった成分がどれぐらい含まれるのか(定量)を調べます。
また、製品に含まれる成分の確認を行う場合には、正しく成分が必要量あること(定量)を調べますし、逆に不良品に含まれる成分を調べる場合には、余分な成分が含まれている(定性)のか必要な成分が足りないのか(定量)を確認します。
異なる意味の言葉
この様に定性・同定・定量は、成分分析の世界では、多用される言葉であり、似た意味のように思われる方もいますが、実際には全く異なる意味を持つ言葉です。