2024年2月26日に掲載しました ”枯草菌とは(前編) モデル生物??” の後編です。

火星でも生存可能な生物である枯草菌とは、どんな生物なのでしょうか。

火星でも生存可能

胞子は、乾燥や高温耐性(100度)や酸性耐性等を備えているため、枯草菌は火星でも生存可能な唯一の生物として考えられています。

枯草菌の胞子

 枯草菌の胞子とは、イメージしやすいのは植物の種子です。胞子と植物の種子が大きく異なるのは、1つの枯草菌から1つの胞子しか作る事が出来ませんし、胞子の大きさは枯草菌の大きさの約1/2であり、種子のイメージよりかなり大きい物になります。ですので、種子ではなく休眠形態とされる場合もあります。




類縁菌の納豆菌

枯草菌の類縁菌として納豆菌があります。枯草菌の学名はBacillus subtilisで納豆菌は、Bacillus subtilis nattoとなります。
昔からの納豆の作り方は、蒸した大豆(滅菌状態)をわら(納豆菌のみがついた状態)で包み発酵させ作ります。もし他の菌があれば納豆は出来ません。大豆を蒸すことで大豆を殺菌する事が出来、稲わらは日光で殺菌されているため納豆菌以外の菌が死滅している可能性が高く、納豆菌は成長速度も他の菌よりも早いので納豆が出来るのです。納豆のネバネバ成分は、ポリグルタミン酸(グルタミン酸が繋がった成分、タンパク質の元)の為、この菌体外放出の能力がタンパク質の菌体外放出の能力の高さを証明しています。





枯草菌の至適温度

枯草菌の増殖の至適温度は、50℃前後ですが実験では30℃から37℃付近で行われます。これは、先行して研究の進んでいた大腸菌の増殖の至適温度が37℃でのための影響だと言われています。さらに、枯草菌を50℃付近で培養すると成長の早さに分裂の速度が追い付かずに長いひも状の菌が繋がった状態になってしまうため、本当の至適温度なのか疑っている研究者の方もいらっしゃいますが、至適温度の定義として成長速度が最大の温度とのみ規定するのであれば至適温度は50℃前後という事になります。

枯草菌と大腸菌の違い

さらに、枯草菌と大腸菌との大きな違いの一つに遺伝子操作のし易さの違いがあります。大腸菌は遺伝子を取り込ます場合には、菌に穴を開けてあげないといけませんが、枯草菌の場合には、菌体の周りの栄養条件が悪くなると何でも菌体内に取り込む性質がありますので、この性質を利用して遺伝子を取り込ませることが出来、簡単に遺伝子操作を行う事が出来るのです。


乳酸菌も類縁菌

乳酸菌も枯草菌の親戚にあたると言えるかもしれません。遺伝子の多くに類似の部分が多いのですが、違いがあるとすれば、乳酸菌は胞子を作りませんし、酸素を好みません。菌の中には酸素が有ると死んでしまう菌もありますが、乳酸菌は酸素が有っても死ぬことは無いのですが、酸素が薄い方が増速の速い菌(嫌気性菌嫌気性菌)で、枯草菌は酸素を好みますので好気性菌と分類されています。
最近では、健康のために積極的に乳酸菌や納豆を食べる人が増えていると思いますが、枯草菌を主成分とした健康食品も販売されているようです。


この様に生物学的な基礎研究に多大に貢献してきた枯草菌は、現在でも研究が進んでいますし、その有効利用の幅も増えてきています。私個人としましては、火星に枯草菌がいることを願っており、発見されれば枯草菌を長年研究してきた者として大変光栄に思います。

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