BMS研究会は「質量分析によるライフサイエンス研究の発展を推進するとともに、人材の育成を通して、人、社会、ひいては地球の未来に貢献する」を理念として活動をしており、毎年1回定期的なコンファレンスを開催しております。今年のコンファレンスでは、「生命科学を牽引する質量分析の最前線~医薬・医療への応用に向かって~」をメインテーマに、生命科学の基礎研究から医薬・医療への応用に関わる質量分析のさらなる可能性について2泊3日の合宿形式で講演、討論が行われました。
今回のBMSコンファレンスには約180人の方が参加をされ、発表や討論の際には参加者の皆様が積極的に意見交換をされており、今回初参加の私としましては、非常に勉強になりました。今年はメインテーマに「医薬・医療への応用」を掲げており、発表内容も特に質量分析の臨床現場への活用という分析から、より臨床へ近づけた内容が多くみられました。
千葉大学医学部・野村先生の発表では、臨床化学においてすでにルーチンレベルで活用されているイムノアッセイと質量分析を比較し、メリットとして質量分析法の特異性や施設間差の少ない点、高感度である点、安価なランニングコスト、多項目同時測定ができることを挙げ、デメリットとして高額な初期投資、専門知識の必要性、前処理の煩雑さなどを挙げており、まさに臨床の視点での発表が行われていました。「医用質量分析認定士制度」も2013年度からスタートしており、臨床の現場でも専門的な質量分析の知識や設備が必要になっていることが感じられました。
また、「医薬・医療への応用」ということで、特に前処理にスポットした「MSを生かす前処理技術」と表しまして各分野の先生方が発表をおこなっておりました。なかでも神戸大学大学院医学研究科・吉田先生は「早期大腸癌スクリーニングシステムの開発」と題しまして、メタボロミクスによる前処理から分析法の選定とその自動化に関して発表をしておりました。また、本発表では近年流行の各オミックス解析の違いや、そのなかでメタボロミクスの特徴の説明があり、本題とは異なる序論の部分で私は非常に勉強になりました。食品関連メタボロミクスの発表では、その前処理に超臨界流体抽出(SFE)が紹介され、脂溶性物質の分析では超臨界流体MS(SFC/MS)が使用されるという発表も行われました。
一風変わった発表として注目を集めておりましたのは、「メタボロゲノミクスによる腸内細菌叢の機能理解とその制御」と題した慶應義塾大学・福田先生の発表でした。メディアで取り上げられた動画も使いながら、生体内外のインタフェースとしての役割を果たしている腸内細菌叢の理解へのメタボロゲノミクスの有用性を議論されておりました。
今回はこれまで参加してきた他の学会とは異なり、臨床分野に近い発表が大変多く、普段なかなか聞くことのできない話を多く聞くことができました。分析という側面でも、イオンモビリティーを利用した発表や、オミックス解析の各分野の違いなど、大変多くのことを学ぶことができました。また、懇親会・ナイトセッション等を通して、非常に多くの方と交流することもできました。
今回の経験を今後の営業活動に生かしていくと同時に、法医学会、法中毒学会とも絡めまして、今後は臨床分野への営業活動の拡大も視野に入れていこうと思います。 |