第41回メインテーマ
「ライフサイエンスを牽引する日本の質量分析」
~天然物化学・バイオ医薬~
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BMS研究会の活動理念
「質量分析によるライフサイエンス研究の発展を推進し、地球の科学の未来に貢献する」を理念とし、毎年開催されている。今年は石川県能登ロイヤルホテルにおいて天然物化学、バイオ医薬をメインテーマにプロテオミクス、メタボロミクス、イメージングMS、薬物動態などの分野で活躍をされている、研究者の方が参加し、ホテルに2泊3日で泊まりこみ、合宿形式で討論をしあうコンファレンス。 |
コンファレンス内容 |
1.基調講演「医薬リードとしての天然物」
神奈川大学 上村先生
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海洋生物由来の天然有機化合物について医薬リードとなりうる、あるいは期待される化合物についての講演。海洋生物より生産される天然有機化合物の中には医薬品として興味深い活性を持つものが存在している。例えばクロイソカイメンより単離されたハリコンドリンBは抗腫瘍活性を持ち、抗腫瘍薬として期待されている。この海洋生物より単離された有機化合物は新規化合物の探索源として大いに期待されている。 |
2.質量分析基礎講座
オーガナイザ 東京医科歯科大学 笠間先生
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高感度、高選択性を発揮する分析法として研究・産業利用に大きく寄与、発展しているLC/MSについての基礎講座。質量分析は分子の情報を質量という切り口で見極める手法である。医薬品の研究開発には合成、薬理、薬物動態、製剤研究など様々な研究分野が携わっている。これらの研究分野においてLC/MSを用いた定量、定性分析は幅広く活用されており、化合物の吸収、分布、代謝、排泄を明らかにする薬物動態研究ではLC/MSは欠かせない分析ツールとなっている。
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3.天然物セッション
オーガナイザ 第一三共RDノバーレ 大貫先生
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人類の長い歴史の中で、非常に多くの天然物成分に恩恵を受けている。しかし、新規成分の探索にかかるコスト、時間の問題で、世界的に見ると製薬企業において天然物探索の撤退が相次いでいた。しかし近年のLC/MSのハイスループットスクリーニングにより、成分探索の効率があがり、近年の創薬研究は天然物への回帰も行われつつある。先に公演のあった海洋生物由来に限らず、植物や、動物由来の天然物による新規化合物の探索が期待されている。 |
4.メタボロミクス
オーガナイザ 大阪大学 馬場先生
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代謝物の網羅的な解析に基づくメタボロミクスは、多成分による精密解析手段として、様々な分野での利用が期待される。メタボロミクスにおける試料調整方法や、LC/MS、CE/MS、MALDI-TOFMSなどを用いた、各種分析方法の紹介。応用例として、微生物、植物、食品、医薬品など幅広い分野におけるメタボロミクスの効果的な運用法が期待されている。 |
5.プロテオミクス
オーガナイザ 愛媛大学 竹森先生
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細胞内、もしくは生体内におけるタンパク質の総体を網羅的に明らかにする研究領域である、プロテオミクス。しかし、生体試料に含まれるタンパク質成分の発現量を明らかにすれば、プロテオミクスが完成されるものではなく、修飾状態、タンパク質相互作用、細胞内局在など生体内タンパク質の発現機構にかかわる、あらゆる情報を相互的に明らかにすることで完成される。 |
6.バイオ医薬セッション
オーガナイザ 国立医薬品 原園先生
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2014年現在、日本で承認されたタンパク質、ペプチドバイオ医薬品は100品目を越えており、特に抗体医薬品は分子標的薬として最も開発が盛んな分野である。 |
7.医療・診断とMSセッション
オーガナイザ 福井県立大 平先生
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イメージング質量分析は医学分野での研究が盛んに行われている。特に病理診断の面で、迅速かつ正確な判断が求められており、近年の精密質量分析装置による正確な病理診断が期待されている。
今回BMSに参加された人数は約150人で、発表の際には皆さんが忌憚のない意見交換をされており、非常に勉強になりました。
近年の流行として、バイオ医薬品に関する発表、ポスター展示が多く見受けられ、今後も製薬企業はバイオ医薬への投資は継続されるであろうと思います。また、今回のメインテーマにもなっていますが、近年のLC/MSの高速、高分解な分析が可能なことにより、天然物の探索も今後増えていくのではないかという印象を受けました。質量分析は医薬品開発における主流な分析方法として確固たる地位を築いているが、医薬品だけでなく、食品、病理診断など更なる幅広い分野への市場の拡大が期待できる分析分野です。この分野に携わる一人として、少し大げさかもしれませんが、社会へ貢献をしていきたいと思います。 |