日本プロテオーム学会 2024年大会×第20回日本臨床プロテオゲノミクス学会
月日:6月26日(水)~28日(金)
場所:リンクステーション青森
今年度の日本プロテオーム学会が青森で開催され、弊社からはパートナー企業であるProtiFi社のJim氏を含めた4名が参加しましたので、下記にレポートを掲載いたします。
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いくつかの基調講演を聴講した中では、“エクソソーム”に着目した講演が一番印象的でした。エクソソームは、細胞が作り血液に放出され、細胞同士のコミュニケーションに使われているといわれている大変微小な構造物です。現在、血液一滴で13種類のがんの診断が可能になってきています。これは、癌細胞由来のエクソソームに含まれるマイクロRNAを測定することで癌腫の特定が可能になっているのです。
講演では、このエクソソームが癌の転移に関連があるとの発表がありました。興味深いことに、この癌由来のエクソソームを阻害することで、転移した癌だけではなく原発巣の癌も縮小するそうです。この機構については、まだはっきりとわかっていないとのことでしたが、今後の癌治療の1種になると感じました。
それ以外にも今回はプロテオゲノミクス学会との合同大会ということもあり、プロテオームの発表だけでなく、転写や翻訳機構に注目した発表もあり、大変勉強になりました。
ランチョンミーティングでは、ライカマイクロシステムズ社に参加させて頂きました。これまで、空間プロテオームはマルディMSを用いた方法しかないと思っていましたが、レーザーによって組織からタイリングで切り離し、チューブに回収して抽出する方法が紹介されました。マルディMSを使う場合よりも空間分解能は落ちてしまいますが、組織量が多いために得られるデータは多いものと思われ、この様な方法も有効であろうと感じました。
また、Sciex社からはTof-MS7600の紹介があり、装置の特徴であるETD(切断機構)を搭載していることが強調されていました。通常よく使われる破壊方法であるHCDでは、たんぱく質の修飾部分が先に切断されてしまいますし、アミノ酸ごとに切断されるのではなく、もっと細かく切断されてしまうので、修飾がどのアミノ酸と結合していたかの情報やアミノ酸の配列情報も失われてしまう可能性があります。それに対してETDの分解方法ではアミノ酸の結合が先に壊れるので、修飾の情報や配列の情報も失われないという説明がありました。
今回の学会では多くの情報を得ることができ、大変勉強になりましたので、次回も機会があれば参加させて頂きたいです。
担当:東京営業所 S.T.
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ProtiFi社は、中部科学機器との協力体制を図りながら、日本での販売活動を拡大したいと考えておりまして、その市場調査のために今回の学会に参加しました。
日本の最先端の研究では、どのようなプロテオミクス手法やソフトウェアが使われているかに興味がありましたので、そういった情報収集も兼ねて臨みました。
講演の中では、別々に実施されているメタボロミクスに関する複数の研究データについて、AI技術を使って一つにまとめて解析するという発表がありました。同じ大学内のデータを統合するだけでなく、個別の研究機関のデータを統合できるという点で非常に興味を持ちました。
また、タンパク質、代謝物、トランスクリプトーム、リン酸化プロテオミクスの4つのデータを統合して、医薬品の効果を測ることができるという研究発表もありました。個別のデータからターゲットの一つだけを解析するのではなく、総合的な効果を測定することができるとのことでした。
また学会の期間中には、プロテオミクスとメタボロミクスの両方を使用したマルチオミクスの手法を使っている研究者の方と話をする機会がありました。その方はプロテオミクスとメタボロミクスで別のソフトウェアを使用しており、これら2つの分析結果を統合したいという課題を持っていましたので、それを解決するため、ProtiFi社のデータ解析ソフトウェアであるSimpliFi™をお勧めしました。
今回の学会で素晴らしい発表をたくさん聴講させていただき、プロテオームの日本でのプロテオミクスの研究がこれほどまでに活発な分野であることがわかりました。プロテオミクス研究に有用なProtiFi社の製品である S-Trap™ やSimpliFi™の日本の市場がまだたくさんあることをあらためて知ることができました。
今後も中部科学機器とのパートナーシップのもと、プロテオーム関連の研究者の方を支援していけるような活動に取り組んでいきたいと思います。
担当:ProtiFi Jim.